きびなごは出世魚かどうか?

きびなごはよく鮮魚店などでも売られています。
小さい魚なのでなにかの稚魚のように思えますが
大きく成長しても体長は全長10cm程にしか
なりません。
大型の魚ならまだまだ幼魚といったサイズです。

 

このあたりから、きびなごが出世魚かどうかということは
見えているような気もしますが
きびなごのうんちくも交えて出世魚かどうかと
いうことを見ていこうかと思います。

 

きびなご 名前 出世魚

キビナゴの画像
(中央のラインが名前の由来)

 

まずは、きびなごという名前の由来
ということから

 

きびなごは体の中央の部分に銀白色の線とやや細い藍色の線が
入るのが特徴。
キビナゴの語源も中央の線の特徴
あやかって付けられたとされています。

 

鹿児島の方言でキビというのは「帯」を表して
いて、ナゴというのは「小さい魚」と言われてます。

 

「帯」+「小さい魚」

 

あのきびなごの横線を帯にみたてて、名前が付いたという
のが由来のようです。
帯と結びつきがあるような魚ということで
武士など出世すると帯が変わるのかと思い調べてみた所。

 

帯と出世に関しての情報はそれほど多くなく
女郎が遊郭の勤めに初めて出ることなども、出世と
呼ばれているようです。
関係はあまりなさそうな感じはするのですが、参考までに。

 

⑨ 女郎が一本立ちして張り見世に出ること。遊郭の勤めに初めて出ること。
※評判記・色道大鏡(1678)三「太夫の新艘、出世(シュッセ)の日より三ケ日の間、さげ髪にて後帯する法也」

出典 – 精選版 日本国語大辞典

 

きびなご 漢字

 

名前が出世魚との関係節、というのはなさそうです。
では漢字などの場合はどうでしょうか。

 

きびなごを漢字で書く場合は
「黍魚子」「吉備奈仔」または一文字では魚編に長と書きます。
魚編に長というのはなかなか珍しいですね。

 

これらの由来は『魚ヘンな旅』に掲載されているので
参考にさせてもらうと

 

「黍魚子」= 黍(穀物)のような卵を産む小さな魚。

「吉備奈仔」= 吉備(岡山地方)でよく獲れる小さな魚。

出典 – 『魚ヘンな旅』

 

とのこと。
キビナゴは卵を海藻などに産みつけをその感じ
が穀物のように見える

 

魚編に長と書くのは
渋沢敬三の『日本魚名集覧』にヒントがあり。
魚編に長に書くのはハモ、カマス、イカナゴがあり
このイカナゴと似たような所でキビナゴも
魚編に長
と書くとされています。

 

渋沢説に沿えば、キビナゴはこの中でイカナゴ(球筋魚)に近
い大きさ、形である「球筋魚」はエロ系ではなく、一説では玉のよ
うに丸く群れる、筋のような細い魚、との意味のようだ。それは(魚編に長)
網代の漁港内で見たキビナゴのいる風景をそのままである。イカナゴと
同じような小魚だからキビナゴにも汎用されて定着したのではない
だろうか。

出典 – 『魚ヘンな旅』

 

漢字の「黍魚子」「吉備奈仔」または魚編に長というのも
出世とはそれほど関係がない
よう。

 

上の中にでてくる(魚編に長)網代という場所
を含めた五島市は年中きびなごが取れるようで。
他にも、九州などの地域、熊本県 天草深牛なども年中みられる。
関西や関東では、そのように年中みられるという訳ではないので
きびなごがアジなどのように年中普通に
みれるというのは、なかなか珍しい感じがします。

 

きびなご 出世魚

釣り餌のキビナゴの画像

 

前置きが長くなりましたが
きびなごは出世魚かどうかということ、まずはお約束の
出世魚の定義から。

 

成長につれて呼名の変わる魚をいう。呼名が変わるのは,成長により風味が変わるためでもある。そのような魚は,昔の人が元服のときとか出世するに伴って名まえを変えたのに似ているので縁起がよいとされ,祝事に用いられる。

出典 – 世界大百科事典第二版 出世魚

 

① きびなごは成長されたものが食べられる

きびなごは成長しても体長は全長10cmほど、獲られ食べられる魚は
ほぼ成魚に近いもの
、成長により風味が変わるというのも
それほどなさそうです。

 

② きびなごには成長名がない

成長につれて呼名の変わる魚、出世魚には地方名以外にも成長名というものが
よくついています。
ブリ、サワラ、スズキ、ボラなどが有名です。
きびなごは、それらの魚にあるような成長名らしきものが
ありません。

 

『日本産魚名大辞典』によれば、キビナゴには12程(キビナゴを除く)の
地方名があり成長名はなし
です。

参考までにキビナゴの地方名は

  1. カナギ
  2. キッポ
  3. キミイワシ
  4. キミナゴ
  5. コオナゴ
  6. ジャムキビナゴ
  7. シュレン
  8. スルル
  9. ハマゴ
  10. ハマゴイワシ
  11. ヤス
  12. リンチン

 

イカナゴもキビナゴに似ているということで
イカナゴに成長名などもあるかと思い引いて
見ましたが、こちらのほうも
地方名が22程(イカナゴを除く)で成長名はなしです。

 

③ きびなごには出世魚の伝説などがない

さらには、きびなごには鯉のように
出世魚の伝承説もありません。

上記したように鯉には特別成長名がありませんが
出世魚と呼ばれれる理由は

中国の「登竜門の伝説」

というものがあり、これが元で出世魚と呼ばれること
もあるようです。

 

 

  1. きびなごは成長されたものが食べられる
  2. きびなごには成長名がない
  3. きびなごには出世魚の伝説などがない

これらの事柄からまとめると
きびなごは出世魚ではない
言えそうです。

 

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